「最後の一滴」

昨日は区切りの日だった

いまは

終わりではなく

始まりの感覚がある

「流れに入った」

周りの音は

聞こえている

でも

自分の内側の

「無音」に

集中している

自分の周りを

何かが

流れている

触れそうで

触れない

その流れに囲まれて

ひとり

止まっているのではなく

流れに乗っている

「その時が近づいている」

じゃなくて

「もう入っている」

ここからは

流れに身を委ねるだけ

そう思っていたけれど

最後にまだ

残っていた

頭では

終わりにしたつもりだった

でもまだ

「体感」としては

終わってなかった

まだ

さよならできていなかった

その人と

初めて会った日のことを

今でも鮮明に

覚えている

それくらい

わたしの中に

「何か」が残った

その「何か」は

時間が経つにつれて

少しずつ

見えてきた

その頃のわたしは

心身ともに

ボロボロだった

いつ壊れても

おかしくないくらいに

その人の

わたしへの「接し方」が

強く印象に残っている

それがずっと

忘れられなかった

月日が経ち

相手との距離が近づくのと

同じように

その人との距離も

離れずにいた

次第に

相手との距離が

離れるにつれて

その人との距離が

近づき始めた

相手とは

全然接触できないのに

その人とは

どこへ行っても

会ってしまう

顔を合わせるたびに

少しずつ

距離がほどけてくる

その人と接する中で

わたしが

最初に感じた

「何か」の正体が

分かった

その人は

私に対して

とても「丁寧」だった

まるで

わたしのことを

大切に扱ってくれているような

そんな感覚があった

あの時のわたしは

それが

心に深く

染み渡ったのだと

気づいた

そして同時に

自分自身を

大切に扱うことを

教えてくれた

相手との関係の中で

傷ついた心

疲れた心

相手を取り巻く

状況や環境に

疲れきっていた

息苦しさを

感じていたとき

その人に会うと

呼吸が楽になっていた

そっと

心がほどけていった

深い言葉を

交わしていたわけじゃない

ただその場を

共有していただけ

でも

その人の佇まい

これまで見てきた

人柄から

「この人は

 わたしを傷つけない人」

そう思えた

だからわたしは

深くは知らないけど

心を許すことができた

小さな

オアシスのような

存在だった

「わたしは

 大切に扱われていい存在」

そう言われているようだった

きっと

わたしたちは

どこか似ていた

ただ

わたしにとって

その人は

「異性」ではなかった

だから

ある出来事をきっかけに

その人との関係が

変わってしまったとき

自分の認識の甘さに

気づかされた

わたしの立場

年齢を考えて

「それはない」と

思い込んでいた

事実は分からないけれど

わたしは

その人に何かを与えていたのだと

だから

それに気づいた時

「傷つけてしまった」と

とても

胸が痛かった

でも

わたしは

どうすることも

できない

静かに線を引いて

距離を取る

その人の行動に

あらためて

成熟を見た

線を引いても

わたしを

無視することはなかった

その人は

わたしのことを

いつだって

尊重してくれた

わたしの方が年上でも

そう感じさせなかった

最近妹から

「お姉ちゃんは完璧で

 太陽のように眩しかった」

と言われた

過去にも知人から

わたしの存在が

「眩しくて苦しかった」

と言われたことがある

そういう経験があったからか

異性から

「好意」を感じた時も

わたしは

瞬時に閉じていた

それ以上

広げないために

「眩しくて苦しい」と言われるたび

自分を閉じるたびに

自分は

悪くないのに

悪いことをしている

気持ちになっていた

どんどん

自分を小さくしていく

その人との関係が変わった

あの出来事は

関係の前提が

変わった瞬間だった

わたしの

「知らなかった前提」が

崩れた

そして

自分の影響力を

自覚した

無自覚だったけれど

わたしは

「女性として」

存在していた

その人との時間の中で

わたしは

女性としての「自信」を

取り戻していた

人を傷つけたくなくて

無意識に

自分を調整してきた

でもその人の

わたしへの対応を見て

はっきり分かった

良くも悪くも

影響を与えたとしても

自分を閉じる必要は

ないのだと

自分で立つ人は

自分で選び

動く

お互い

崩れない

そのことにも

気づかせてくれた

今日の

あの瞬間

言葉は交わしていないけれど

お互い

何かを感じていた

あれが

本当のお別れだった

残っていた感情が

涙と一緒に

最後まで流れ切った

申し訳なさ

感謝

寂しさ

少しの痛み

これが

まとめて出ていった

その人がいたから

わたしは

手離さずに

ここまで来れた

わたしを

支えてくれていた

切ないけれど

大切な思い出になった

これも

流れのひとつ

相手と

純粋な状態で

向き合うための

わずかな

ノイズも残らない

わたしの中に残ったのは

たった一人だった

目次