「わたしが求めていたのは
これじゃなかったのかもしれない」
この気持ちが
一度顔を出すと
もう
隠れることはなかった
自分の中に
疑いがあると
何をしていても
集中できない
これまでは
見ないふりをして
抑えていたけど
もう無理だった
強い虚無感が
押し寄せていた
ちょうど
色々なことが
重なっていた
そのとき、
一緒にいた人と離れたのも
この時だった
その人に言われた言葉や
長年蓄積された
自己否定感が
一気に輪郭を持ち
わたしの目の前に
現れた
「やっぱりわたしは
口先だけの
中途半端な人間なんだ」
自分を奮い立たせて
ギリギリのところで
走ってきていたから
落ちるのは
早かった
そのことも
自分を追い詰めた
「こんな簡単に折れるのは
その程度だったってこと」
「本物じゃなかったんだ」
生きる目標を
失いかけていた
舞台がなくなったら
一体
わたしには何が残るのか
何のために
ここまで必死に
頑張ってきたのか
目標がないわたしは
わたしじゃない
「何もないわたしに
どんな価値がある?」
胸の真ん中に
大きな穴が開いたようだった
「自分には何もない」
この言葉が
頭から離れない
これから
どうやって生きていけばいいのか
本当に
分からなくなっていた
身体がふわふわとして
定まらない
視線が泳ぐ
顔を
上げられない
「わたしらしさ」とは
何だったか
「人としてできていない子」
「自立できていない子ども」
過去に言われた言葉たちが
蘇ってくる
心も身体も
疲れ切っていた
舞台の世界そのものが
違っていたわけじゃない
「総合芸術」
この部分は
合っていた
ただ当時は
それを表現できる形が
舞台以外で
まだ見えていなかった
自分の性質上
やはり
多くの人の中で生きることは
向いていなかった
感じ取る力が
必要な世界ではあったけれど
わたしには
取捨選択する余裕がなかった
まだ
自分の軸もできていなかったから
すべてを
感じ取ってしまっていた
読み取りすぎて
振り回され
苦しくなっていく
創作自体が違ったのではなく
「環境が合わなかった」
ただ、
それだけのことだった
でも当時のわたしは
そんな風には
考えられなかった
ひたすら自分を責めて
自分で
自分の価値を
見えなくしていった
一人になることを
初めて
「怖い」と思った
少し
荒れていた時期だったかもしれない
空白の時間を作りたくなくて
予定を詰め込んでいた
一人になると
三角座りをしている
自分の足元が
底なし沼に見えてくる
じっとしていられない
自分を襲っている
不安や恐怖と
向き合う勇気がなかった
「どうして」
そう感じているのか
自分の声に
耳を傾けることが
できなかった
不安は増すばかり
焦燥感が募る
「何かを探さないといけない」
自分の中にできた穴を
埋めようとしていた
こうしてみると
自分にとって
「創作」が
どれほど
「生」と直結していたのかが
よく分かる
「創作」は
わたし自身だった
失うと
生きられない
ここで
初めて浮かんできた
考えがあった
「もう結婚するのも
ありなのかもしれない」
そう思ってしまった
そして
このあとに待っていたのは
夫との出会いだった

