自分の光の輪郭を
見つけたわたしは
その世界に入ることを
目指した
すると
耳にする音楽も
変わりはじめた
偶然なのか
必然なのか
関わる先生が
その世界に近い人たちで
舞台芸術に
触れるようになっていた
自分の好きな世界の
舞台だけでなく
他のミュージカルや
芝居も観ていた
シェイクスピアを
夢中になって
読んでいた
それでもやっぱり
あの世界に行きたかった
あの世界にしかない
空気に
惹かれていた
他に類を見ない
その世界
輪郭が
はっきりと描かれている
あの凛とした空気感
きっと
自分の表現したい世界観に
近かった
何がきっかけだったかは
覚えていないけれど
あるとき
オペラの世界を知った
友人が
歌曲を練習する姿や
授業で歌う曲を
CDで聴いたりしていた
でも
舞台そのものは
観たことがなかった
はじめて
その世界を目にしたとき
深い衝撃があった
「これが
受け継がれてきた姿」
音楽
美術
衣装
照明
演者
舞台を構成している
すべてのものが
ひとつになっていた
その後ろには
太く
深く根差した
柱がそこにあった
積み重なった
確かな重み
圧倒的な
存在感
「これが
クラシック音楽か」
わたしの
クラシック音楽の認識が
変わった瞬間だった
目を閉じると
音の映像が流れてくる
色がある
音の感触がある
当時のわたしは
それをまだ
言語化できていない
ただ
強く
何かを感じていた
胸の奥が
静かに高鳴る
自分の中の
奥を
刺激してくる
突き動かされるように
音楽を聴き
本を読み込んだ
勉強したくて
仕方なかった
舞台の世界には
わたしの「好き」が
すべてある
数が多くて
一つに
深く入れない
広く浅く
なってしまう
それでも
舞台のことを
知るたびに
満たされる感覚があった
ただ
完全には
埋まらない
なぜ
埋まらないのか
そのときは
分からなかった
この道で
合っているはず
舞台芸術をつくるすべてに
心が反応している
好奇心が
止まらない
だから
間違いじゃない
勢いよく
走り出したはずなのに
いつの頃からか
こんな風に
言い聞かせる自分が
いた
卒業後
就職をしなかったわたしに
転機が訪れる
大学の先生が
ある演出家を
紹介してくれた
後日
突然連絡が入る
わたしの生活は
一変する
電話の内容は
「いま、これから」のことだった
あの先生が演出する
舞台の練習が
午後から始まる
電話の相手は
舞台監督だった
はじめて
話をした
その舞台が
どんな演目なのか
いつが本番なのか
何も分からない
来るか
来ないか
それを
問われている
頭の中は
パニックだった
心臓の音が
うるさかった
だけど
迷っている時じゃない
震える手足を
必死に落ち着けて
冷静になろうとする
自分がいた
「チャンスがきた」
その言葉が
浮かんだ
そして
覚悟を決めた
「よろしくお願いします」
わたしは
外出先からそのまま
指定された場所へと
向かった
わたしの求める光が
そこにあると
信じて

