「time limit」

曇り空の下

いつもより

周りが動いていた

その動きの

ひとつひとつに

反応していた

相変わらず

緊張は

解けない

あの短い時間の中

ひとつずつ

ピースが揃い始めた

振り返ると

面白いほど

綺麗に繋がっていた

周りの動きを眺めながら

心境は

少しずつ変化していった

時間は迫り

状況も変わっていく

タイムリミットまで

あとわずか

何度も

時間を確認する

この時の

わたしの中には

二種類の自分がいた

近づく結果

見えないことへの

緊張が高まる

内面は緊張していた

呼吸が浅く

動きも多くなる

同時に

冷静な自分もいる

重心を下げて

足元に

意識を集中させていた

そうすると

心の半分は揺れている

それでも

身体は安定している

対極にある

二つの状態が

一つの場所で

綺麗に

成立していた

緊張による揺れは

胸ではなく

後頭部と

首の間あたりで

感じていた

少し

不思議だけれど

足元と

後頭部に

意識を持っていくと

感情が

暴れない

わたしは

相手を待っていたはずなのに

完全に

内側に向いていた

自分の中で起こる

微細な動きを

すべて確認していた

タイムリミットは

明確な時間が

あるわけじゃない

だから

どこで区切るのかは

自分次第

時間が過ぎていく中

頭に浮かんできたのは

「どこで

 終わりにするか」

相手は来ない

早いうちから

分かっていた

それでも

待っていた

次はどうするべきなのか

一瞬

胸の奥が揺れた

「このあと

 わたしは

 崩れてしまうのかな」

不安が

よぎった

かといって

ここで去るのは

まだ違う気がした

「自分の心が

 納得できるところまで」

時間の流れ方が

変わった

あんなに小刻みで

早く感じていたのに

自分で答えを出した途端

時間は横の流れに変化した

ゆったりと

空気に溶けた時間が

目の前を流れていく

緊張を落ち着かせるために

動いていたけれど

もう

緊張はない

視界

周りの音

ノイズが消えていく

ひとつひとつを

確認するように

歩いていた

風と空気のにおいを

感じながら

「もうすぐ雨が降ってくる」

最後は

ひとりになった

空を見上げて

周りを見渡し

いつもここにいた

過去の自分を

見つめていた

その自分の横に

そっと

並んで立った

少しだけ

一緒の時間を過ごした

相手は

姿を現さなかった

わたしの中で

終わりを告げる

音が鳴った

状況的なものなのか

これが

相手の意思なのか

それは

分からない

ただ

相手は今日

来なかった

涙も

胸の痛みもない

最初から

決まっていたようだ

だから

揺らがなかった

「終わらせるために」

今日

あの場所へ

向かっていた

「雨が降ってくる」

静かに

幕を閉じた

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