「欲求の美」

熱を感じていた

それは

とても強くて

激しい

突き刺さるような

鋭い熱さ

いつもじゃない

ふとした時に

ふいに感じる

でも

それは

自分と

戦っている熱だからと

あまり

意識していない

つもりだった

その熱が

強まった時があった

いま思うと

あの瞬間のわたしは

“怖さ”を

感じていたんだと思う

わたしは

絶対逃げないけれど

それでも

逃げたくなる感覚

相手の熱に

負けてしまいそうな

取り込まれて

しまいそうな

何かを

恐れる気持ち

それに

近いものを

感じていた

自分の中で

ずっと

恋愛だけが

別物だった

“人間”には

深く

興味があるのに

恋愛から生まれる

“人間関係”には

興味がなかった

それはなぜか

恋愛は

人を濁らせる

汚れたものだと

思っていた

人間の本質が

一番

“汚く”出る場所

それが

恋愛だった

人間の本質は好きだけど

汚く出る形は嫌だった

寂しいから欲しい

反応が欲しい

愛されたい

選ばれたい

不安だから確認したい

ありふれた

恋愛の型

不足の視点

自分が

そこに入ると

自分の美意識が汚れる

自分の在り方が濁る

ただの

プライドじゃなく

身体感覚として

それがあった

汚れる

濁る

息苦しい

胸が詰まる

不足に落ちる

自分が嫌で

だから

避けてきた

自分を

汚したくなかったから

そうやって

自分の美意識を

防御してきた

だから

欲をむき出しにした強さを

目の前にした

あの瞬間

怖さと

違和感が

立ち上がった

正直に

自分の熱を

出してきたのに

自分だけが

綺麗な場所で

欲を隠して

守って

無にして

何もない顔をして

立っていてもいいのか

それは

自分自身を

置き去りにしている

感覚でもあった

「本音の温度に差がある」

整った強さだけじゃ

並べない

同じ高さになるには

同じ熱量が必要

そう

直感したんだと思う

わたしが

怖かったのは

相手の欲ではなく

それに反応する

自分の欲

自分は持っていないと

思っていたから

だから

怖かった

相手を見て

自分の欲を知った

相手の中に

不足を見た形

わたしは

相手を必要としなくても

生きられると思っていた

でも実は

不足に落ちたくないだけだった

つまり

そこに

落ちる可能性があるくらい

強く求めるものが

存在していた

欲求がゼロなら

落ちようがない

それは

依存とか執着とか

そういうものではなく

もっと

純粋な

根源的なもの

会いたい

触れたい

同じ高さで確かめたい

並んでみたい

好奇心にも似た

人として

自然に持っている欲求

わたしはずっと

その欲求を持つことを

“濁り”として

判断していた

でも

本当は

濁りじゃなくて

ただの

人間だった

人間として

完成していくプロセス

感じること自体を

禁止していた

恋愛そのものを

危険物として

扱っていた

そんな古い防御が

解除された

“恋愛の欲を

持っているわたし”

このわたしも

自分の美意識の中に

入れることができた

好きでいい

会いたいと思っていい

求めてもいい

強い欲求を

存在させたまま

崩れずに立つことができる

その形は

まだ

わたしも知らない

未知の領域

これから生きる

新しいわたしの姿

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