「凍る身体」

ときどき

“抜き打ちテスト”があった

相手と

相手の家の望む

“嫁”として

ふさわしいかどうかを

見るために

なんの前触れもなく

いきなり

その場に

立たされていた

一体

何が起こって

いるのかも

分からない

誰も教えて

くれない

泣きそう

だけど

恐怖で

涙も声も

でない

手足が

小さく震えて

全身が

氷のように

冷たく

なっていく

いくつもの

視線だけが

わたしに

注がれる

“品定め”を

されている

息ができない

音が聞こえない

「わたしは

 どうするのが正解?」

ひとは

本当の恐怖を

感じたとき

涙が

出てこない

命の危機を

感じた時は

泣いてる場合

じゃないから

このテストが

いつ来るか

分からないから

わたしは

常に

緊張状態だった

テストでは

合格点を

もらえたことは

なかった

わたしは

何を言っても

何をしても

いつも怒られる

“人として

できていない子”

そう

言われていた

だから

“こんな

女性になって”

“わたし”

じゃなくて

“相手の”

理想の女性を

要求される

服装や髪型

だけでなく

ほぼすべての

持ち物を

相手から

与えられていた

相手が

何を要求して

いるのかを

常に察して

動いていた

怒られ

ないように

その人の

基準の世界で

生きていた

その世界の

“普通”を

最初は否定

していたけど

次第に

疲れてくる

わたしの

意思なんて

この人には

いらないものなんだ

ニコニコして

いればいい

そうすれば

怒られないで済む

そうやって

少しずつ

抵抗する力を

なくしていった

その人から

離れたあと

わたしは

立つことが

できなかった

足に力が

入らなくて

立つことも

歩くことも

できなかった

“わたしは

どうやって

息をしていた?”

呼吸の仕方が

分からなかった

その場から

一歩も動けない

解放されたかった

はずなのに

ここから

どう動いて

どの方向へ

進めばいいのか

全く分からない

自分に

愕然とした

最後の

最後まで

責められて

怒られて

あの人の

理想の

女性像を

必死に

演じ続けて

あんなに

耐えてきたのに

自分の中に

何も残って

いないことに

ようやく

気付いた

これまでの

わたしの時間は

何だったの?

離れて

はじめて気づく

ずっと

相手の

操り人形に

なって

いたことに

自分の

生き方どころか

存在の

仕方さえも

分からなく

なっていた

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