「美の原石」

美意識の

高い人だった

完璧な

「理想の女性像」を

持っていた

どこに出しても

恥ずかしくない

誰が見ても

褒めてくれる

一緒にいて

「自分の価値」が上がる

そんな

「女性」だった

相手の求める女性が

一人ずつ

わたしの中に

増えていった

わたしのことを

とても

褒めてくれた

でもそれは

「いまのわたし」ではなく

「未来のわたし」に対してだった

「わたしの可能性を

 見てくれている」

わたし自身も

そんな風に

考えるようになっていた

相手に

褒められたいとか

認められたいとか

そういうことを

考えたことはなかった

ただ

なぜか

「いまの自分じゃダメ」

まだまだ

足りていない

その意識が

ずっと消えなかった

何かが不安で

自分がどこに向かって

走っているのか

分かっていなかった

とても

窮屈だった

重くて

自由に動けなかった

心も体も

固くなっていた

でも

わたしの中には

ほんのわずかに

動いている部分があった

たしかに

わたしの好みは

聞き入れてもらえない

けれど

相手の

「美」へのこだわり

色使いや

選ぶデザイン

バランスの取り方

一歩下がって

全体を見る

目線

そして

毎日のメンテナンスの大切さ

特別な何か

ではなく

日常の

小さな積み重ねが

「美しさ」をつくるのだと

隣で見ていて

いつも感じていた

わずかに

共感している

自分がいた

わたしの

「美」に対する感性は

ここから

目覚めはじめた

お人形のようだったけれど

完全に

流されているわけではなかった

あの長い時間の中で

相手の感性を

吸収して

学んでいた

相手の描く

女性像は

「男性を立てる

 良妻賢母な美しい女性」

外見や行動といった

見える部分を

求められた

その理想像を

共有しながら

わたしは

「美しさ」とは

毎日の

自分の意識が作り上げている

ということを知った

手間と時間がかかっても

「自分を丁寧に扱う」

その心が

外見の美しさに現れる

日々を丁寧に

積み重ねることができる

ストイックな姿勢に

強く

「美」を感じていた

ずっと

「外見の美」を

教え込まれたと思っていた

でも

そうではなく

叩き込まれていたのは

女性として

「どう生き

 どう立ち

 どう自分を扱うか」

この

わたしの美学だった

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