「火種」

別の形で

出会っていたら

わたしたちは

切磋琢磨できる関係を

築けたのかもしれない

ずっと

そう感じていた

相手は「安心」を

求めていた

でも

「美」に

強く反応する人でもあった

安心と刺激

矛盾する

この役割を

両方わたしに

求めてしまった

相手にとって

わたしは

素材であり

鏡だった

わたしが

相手の手によって

本来の輝きを

取り戻せていたら良かった

でも

そうはならなかった

自分を抑えこんで

耐えている

わたしの姿は

相手の姿を

そのまま映し出していた

わたしたちは

互いに「火種」を

持っていた

まだ

自分の人生の中で

燃やし切れていない 

「火」 

「創作する人間の火」

それに

共鳴していた

相手の中の「本気」に

わたしは

反応していた

一つのことを極めている

その姿は

当時の自分が

望んでいた姿でもあった

相手の感性を

尊敬していた

けれど

わたしも

同じ種類の人間だった

殻を破れなくて

苦しんでいる

相手の姿は

わたし自身

そのものだった

自分のエネルギーを

どこに向けていいのか

分からず

迷いや不安の中

ただ

走るしかなかった

「舞台の世界へいきたい」

この気持ちに

間違いはないはずなのに

なぜか

まっすぐ

向かうことができない

そんな現状と葛藤して

焦りを

火にしてしまった

互いが互いの

点火装置だった

だから

どれだけ苦しくても

逃げられなかった

目を

逸らせなかった

でも

同じ火を映す人とは

一緒に生きられない

互いを

燃料にしてしまう

火は照らす場所であって

住む場所ではないから

わたしたちの火種は

「発火できる場所」を

求めていた

互いを

差し出し合い

消耗し合い

本能をぶつけながら

着火点を

探し続けていた

目次