わたしの卒業を
待っていたのだと思う
わたしが
就職して
社会人になれば
現実的に
話を動かすことが
できるから
でも
ここでもまた
わたしは
相手の期待を
大きく
裏切ることになる
あるときから
わたしは
自分のことを
話さなくなっていた
将来の話をされても
自分のことは
一切
言葉にしなかった
相手は
わたしありきで
将来の話をしていた
でも
わたしは
自分の人生の中に
相手は
存在していなかった
それはきっと
ただの一度も
「自分の人生は
自分のもの」
何と言われても
そこだけは
譲れなかった
言葉には
しなかったけれど
だから
相談も
報告もせず
演出家助手の募集に
応募していた
大学の先生に
相談したことがあった
相手の
言葉遣いのチェックが
厳しくて
疲れると
先生は言った
「あなたは今
そんなことにエネルギーを使っている
場合じゃない」
「もっと
やるべきことがある」
「そんなくだらないこと」
先生には
応募する作文を
見てもらっていた
あの時間が
少しずつ
わたしの中に
火を灯していった
先生は
いつも
「もっと熱くなりなさい」
「本気になって
情熱的になりなさい」
「若いんだから
徹夜でも何でもして
必死になりなさい」
授業で
そう言っていた
厳しかったけれど
わたしは
大好きだった
先生の言葉が
わたしの中に
強く
響いていた
いつからか
相手と
いる時の自分と
いない時の自分
二人の自分が
存在するように
なっていた
二重人格なのかと
思うくらい
見事に
切り替えていた
わたしの
視線の先には
相手との結婚は
存在していなかった
だから
わたしは
「就職をしない」
選択をした

