「烙印」

「お嬢ちゃん」

そう呼ばれていた

あの世界の中で

わたしは

「存在」として

扱われていなかった

そこに

「いる」けれど

「いない」存在

それは異様なことだと

いまなら

理解できるのに

あの頃のわたしは

自分の命を守るために

ひたすら

耐えるしかなかった

相手は

母親を恐れていた

その母親に

わたしは「できない子」の

烙印を押されてしまった

それは同時に

相手にも

「できそこない」の烙印を

押されたことを意味する

自分の育ってきた環境と

違いすぎた

わたしの中には

「親を超える」とか

「上下」の意識が

存在していなかった

だから

相手の考え方を

理解することができなかった

でも

いまなら

その理由もよく分かる

相手が

わたしを「できない子」と

扱ったように

自分もずっと

その世界で生きてきていた

「優劣」

「上下」

たった一度の失敗も

許されない

評価と比較で

成り立っている世界

そんな世界で

相手は

いつ

死刑宣告を受けるか

分からない恐怖と

戦いながら

生きていた

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