音のない音
真っ暗な中で
その音を
聴いている
外側では
音が鳴っている
聞こえているけれど
聞こえていない
自分の真ん中に
ぽっかりと穴が開いている
黒い
暗闇の穴
そこに
意識を集中させている
すると
聴こえてくる
何もない音
静寂の音
境界線とは
少し違う
移行する音じゃない
これは
境界が動く音
外から見ると
何も起きていない
でも内側では
「カチッ」と
何かが噛み合っている
その音を
聴いている
少し
緊張している
ほんの少し
高揚もしているのかもしれない
でも
冷静な自分もいる
それは
期待しない諦めでも
冷めてどうでも良くなったわけでもない
まるで
凪のように
風で揺れるけれど
そこから動かない
「わたしはここにいるよ」
ただ
この気持ちだけを持って
相手にすべてを
委ねている
人生の次の章が
静かに動き始める
その直前
何かが動き出す前の音
その音を
わたしは
いま聴いている

