「一つのことに定まらない」
これがずっと
悩みだった
夢中になりたい
たった一つのことを
極めたい
この気持ちは
強くあった
でも
意識が
一つの場所に留まれない
そんな自分が散漫で
浅く軽薄な人間のように
感じられた
興味の対象は限られていた
何にでも惹かれるわけではない
芸術
文学
歴史
宗教
哲学
心理
語学
ファッション(装い・衣装)
これに関するものには
強く興味を示すけれど
他のことには
ほとんど興味がない
とくに世界史は
理由も分からず
いつも
焦りを感じていた
あれは
知りたい欲求だった
世界史に限らず
その欲求が生まれた時
一気に吸収していく
生活すべてが
それ一色になるくらい
のめり込む
でも
長くは続かない
どこかで
一度区切りが来る
そしてまた
別のもので
それが起こる
それが
わたしの好奇心の形だった
たった一つではないから
掘り下げている実感が
持てなかった
でも
視点を変えると
一つではないけれど
同じことを繰り返している
わたしは
飽きっぽく
目移りしていたのではなく
興味のある複数のものを
順番に深めていただけだった
舞台や映画の鑑賞
読書の仕方
何に対してもそうだった
自分が入り込む感覚には
ならない
感動して涙は出る
でも感情移入というより
音楽の響きや
転調による効果
照明の色やタイミング
役者の間や空気感
哲学的な問いや
思考の流れ
そういった構造を
体感しながら見ている
なぜ
あんなにも世界史が必要だと
感じていたのか
なぜ
多ジャンルのものに
興味があったのか
すべて
自分の中に
素材を増やすためだった
事実と構造
これを
創作に生かすため
だから
深く知る必要はなかった
どんな小さな断片でも
頭の片隅に残っていることが
大事だった
自分の感覚を
引き出しにしまう
すると
創作をするとき
具体と抽象の割合を
変えるだけで
予想外のもの同士の
繋がりが見えてくる
単調な世界が複雑になり
深さのある世界へと
変わる
一見ありえないようで
繋がっている
そんな世界がある
わたしがつくりたいものの本質は
ここにあった
それは
見えない繋がりを見つけて
一つにすること

一つだけでは
わたしの世界は作れない
一つの世界をつくるために
いくつもの素材が必要だった
だから
間違っていたわけじゃない
あの頃の自分に
ようやく
伝えてあげることができた

