「繋がる好奇心」

自分の長所は何かと

聞かれたら

「好奇心旺盛なところ」

きっと

そう答える

親の話からも

幼いころから

そうだったと分かる

年齢を重ねるごとに

興味の示し方は

変わっていく

表に出すタイプでは

なかったから

控えめで

大人しい子

そんな風に

見られることが多かった

でも

内側では

勢いよく

火が育っている

大人になってから

友人に

「見た目は静かなのに

 ものすごく夢が大きくて

 ギャップがすごかった」

そう言われたことがある

高校生くらいから

本格的に

好奇心に火が付き始める

好奇心の方向が

見えてきた

地元ではなく

電車通学の学校を

選んだことで

行動範囲が

一気に広がった

これまで

出会ってきた子たちと

違っていた

それぞれが

「個」で存在していた

中学生の時に感じていた

あの息苦しさが

ない

馴染めない疎外感も

なかった

おそらく環境が

自分に合っていたのだと思う

知り合いは

いない

一人だけど

まったく

不安じゃなかった

むしろ

ワクワクが止まらない

高校の雰囲気を

言葉で表すなら

「凛とした空気感」

これが

近い気がする

探り合うような

空気はなかった

それぞれが

綺麗な輪郭を

保っている

振り返ると

そう感じる

これまで

自分を小さくしてきた

わたしも

あの空間で

少しずつ

呼吸を取り戻し始めた

素直に自分らしさを

出せるようになった

それは

明確な形を見つけることでも

答えを出すことでもない

「感じたものを

 自分の中に取り入れること」

自分を小さくしてしまうと

心が閉じてしまう

「感じること」ができない

感じられなければ

自分の中に

変化が起きない

素直に感じるほど

好奇心が

湧き出てくる

あの好奇心が

すべて

未来に繋がっている

わたしの

「創作」への道は

ここから始まった

「一つのことに定まらない」

これがずっと

悩みだった

大学に入り

ますます

強まっていった

周りは

自分の楽器と

向き合っていた

「わたしは

 これしかできないから」

周りの言葉が

心を刺してくる

夢中になりたい

たった一つのことを

極めたい

この気持ちは

強くあった

でも

意識が

一つの場所に留まれない

そんな自分が

散漫で

浅く

軽薄な人間のように

感じられた

興味の対象は限られていた

何にでも惹かれるわけじゃない

芸術全般

文学

歴史

宗教

哲学

心理

語学

ファッション(装い・衣装)

これに関するものには

強く興味を示すけれど

他のことには

ほとんど

興味がない

大学のときも

無意識に

この領域の授業ばかりを

取っていた

とくに世界史は

「勉強しなきゃ」と

理由も分からず

いつも

焦りを感じていた

あれは

知りたい欲求だった

世界史に限らず

その欲求が生まれた時

一気に吸収していく

ものによっては

生活すべてが 

それ一色になるくらい

のめり込む

でも

長くは続かない

どこかで

一度

区切りが来る

そしてまた

別のもので

それが起こる

それが

わたしの好奇心の形だった

一つのものと

向き合い続けているわけじゃないから

掘り下げている実感が

持てなかった

でも

視点を変えると

一つではないけれど

同じことを繰り返している

わたしは

飽きっぽく

目移りしていたのではなく

興味のある複数のものを

順番に

深めていただけだった

一回ごとの時間が

そんなに長くないから

浅い気がしていた

読書の仕方にしても

作者や

登場人物を

深く理解しようとはしていなかった

文学作品でも

結構あっさり読んでいる

これは

舞台作品でも

映画でも

何に対してもそうだった

感動して

涙は出る

でも

感情移入というより

音楽の響きや

転調による効果

照明の色や

タイミング

役者の間や

空気感

哲学的な問いや

思考の流れ

そういった

「構造」を見ている

なぜ

あんなにも

世界史が必要だと

感じていたのか

なぜ

多ジャンルのものに

興味があったのか

すべて

自分の中に

「素材」を増やすためだった

「事実と構造」

これを

創作に生かすため

だから

深く知る必要は

なかった

どんな小さな断片でも

頭の片隅に残っていることが

大事だった

もちろん

情報としてだけでなく

それに対して

「自分が何を感じたのか」

これが大切

自分の感覚を

引き出しにしまう

すると

創作をするとき

具体と抽象の割合を

変えるだけで

予想外のもの同士の

つながりが

見えてくる

単調な世界が

複雑になり

深さのある世界へと

変わる

一見

ありえないようで

繋がっている

そんな世界がある

わたしがつくりたいものの本質は

ここにあった

それは

見えない繋がりを見つけて

一つにすること

一つのことに定まらないと

苦しんできたけれど

そうじゃなかった

一つだけでは

わたしの世界は

作れない

ただ、

それだけのことだった

「一つの世界をつくるために

 いくつもの素材が必要だった」

だから

間違っていたわけじゃない

あの頃の自分に

ようやく

伝えてあげることができた

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