「真珠の輝き」

「こんな人になりたい」

そう思える存在は

いなかったけれど

もし

一人だけ

挙げるとしたら

それは

祖母かもしれない

祖母は

とてもオシャレな人

洋服はもちろん

和服の着こなしも

素敵だ

既製品も

自分の手で

自分のサイズに

仕立て直す

黒が似合う人で

色物は

ほとんど着ない

黒に対する

こだわりも強く

素材

光沢

質感

徹底的に吟味する

祖母の中では

価格の高さが

良いものではなく

価格が高くなくても

質が良く

「見えるもの」

合わせ方で

「生きてくるもの」

そういう品を

探し出すのが楽しいと

聞いたことがある

毎年1月になると

春服について

考え始める

お店に見に行ったり

春に着たい洋服を

イメージする

そしてまだ寒い時期に

自分の手で仕立てて

準備をする

それがきっと

祖母の楽しみ

近所に買い物にいくだけでも

自分が気に入らない格好は

しない

でも

完璧に固めすぎるのは

格好悪いから

ほどよい抜け感が

大切だと

言っていた

わたしは

何歳になっても

自分を美しく保つこと

品性を忘れないこと

その生き方を

心から

尊敬している

「いくつになっても

 美しくあることを

 忘れちゃダメよ」

あのときの言葉を

いまでも覚えている

祖母は

自分の「好き」を

極めている

それが

自分らしいから

そうしている

ただ

それだけなのに

いつも

心が動かされていた

わたしは

若い頃から

「真珠」が好きだった

宝飾品には

興味がない

でも

真珠だけは

違った

20代のとき

母が

真珠のイヤリングと

ネックレスを

用意してくれた

とても嬉しくて

普段にも使うほど

気に入っていた

でも

その頃のわたしは

「この真珠が

 本当に似合うのは

 40代以降になってからだな」

そう感じていた

真珠は

若さではなく

内側に重なった時間が

静かに

輝きになる

イミテーションも

カジュアルなものも

たくさんある

わたしも

そういうもので

楽しんでいる

でも

正式な場では

本物が似合う

女性でありたい

流行ではなく

表面的でもない

一貫性があって

自分で選べる

それは

時間を通ってきた

積み重ねのある

女性

それが

真珠を身に着ける

条件のように

感じていた

その背筋が伸びる感じが

好きだった

品性は

持って生まれたものもあるけれど

やはり

どのように生きてきたか

心の在り方が

現れてくる

わたしは

母から祖母の

ブルー真珠のネックレスを

譲り受けた

母が用意してくれた

わたしのネックレスは

時がきたら

きっと

娘へと渡される

そうやって

長い時間

大切に

世代を越えて

受け継がれていく形を

美しいと

感じる

真珠は

女性の美しさを

引きだす

ダイヤモンドのような

放つ輝きではなく

内側から滲み出る輝き

だから

若いときは

まだ輝きが

表面に留まる

かといって

年齢だけが上がっても

輝けない

自分の内面が

どれだけ熟成されているか

そして

外側と

一致しているか

真珠のイヤリングを付けて

立った時

それが

姿にすべて現れる

ごまかせない

嘘がつけない

本物だけが

出せる輝き

わたしは

祖母の在り方を見て

女性としての喜びを

知った

美しくあること

美しさを望むことを

遠慮してはいけない

20代の頃に感じた

女性像に

いまの自分が

少しでも近づけていたら

いい

「真珠を着けたわたし」ではなく

「真珠を着けることを

 選んだわたし」

わたしの憧れは

祖母のような

「真珠の輝きをもつ女性」

そんな在り方に

惹かれている

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