「突破の瞬間」

いつも

その言葉を耳にするたび

心がざわついていた

あれは

自分が大切に思っているものを

雑に扱われる不快感

そして

大切なものを

傷つけられるかもしれない

危機感

「そんな風に触れないで」

ふだんは

滅多に出てこない怒りが

わたしの中に

ざわつきとして

湧きあがっていた

だから

あの時も

いつものように反応した

ただ

ざわつくけど

そこに踏み込むことはできない

わたしの領域じゃ

ないから

大切だけど

わたしは

直接手を出して

守ることはできない

だから

いつも

このざわつきを抱えて

飲み込むしかなかった

でも

今までと違う展開が

待っていた

止まらない

混ざらない

自分で線を引いて

場をつくる

その瞬間だった

それを選んだのは

わたしじゃない

それは

自分を雑に扱わず

踏み込ませない

強い意志の表れ

そのときに

すぐ気づいたわけじゃない

あとから

思い返す中で

ひとつずつ見えてきた

そして

思い出すだけで

涙が出そうになる

あれは

古い自分自身を

自分で壊す瞬間だった

いちばん苦しいのは

従来の自分を壊して

乗り越えること

これが

いちばん難しい

同じ型を繰り返そうとしている

自分に気付かず

元のループに戻る場合もある

「自分を変える」

そのためには

今しようとしている選択が

従来通りなのか

新しいものなのか

それを

見抜けないといけない

合っているか

ずれているか

正解が

分からなくなるくらい

自分の周りを

それらしい状況やものが

取り囲んでくる

過去の自分へ

引き戻されそうになる

そこで

自分自身を

信じ抜くことができれば

道は開ける

もう

自分の感覚だけを

信じていけばいい

それは

自分の感覚を

信じられるようになった

証だから

とても

不利な状況が揃っていた

別の機会にした方が

成功できたはず

でも

おそらく

目的は結果じゃなかった

「自分が動けるかを試す」

これだった

空気

状況

過去の自分に引っ張られずに

一歩を踏み出せるかどうか

自分の殻を破る挑戦

空気に

のまれない

欲しかったのは

あの状況下でも

「自分は動いた」

という事実

過去の自分との

一対一の

対面勝負

自分の尊厳の方を選んだ

あの瞬間のために

時間をかけて

自分を少しずつ

変えてきていた

誰にも頼れない

辛さと孤独

やめることもできたのに

立ち続けることを選んだ

気付いてしまった人は

静かに

もう戻らない

それが

深く分かってしまうから

胸が熱くなる

涙が出てしまう

そして

心から

尊敬する

人として

その在り方を

見てしまう

意思や行動に宿る力強さが

わたしとは全然ちがう

そこには 

突き抜けるような勢い

たくましさ

重さ

男性的な芯の強さがある

そして

これが

本来の姿だったのだと

初めて姿を目にしたとき

いぶし銀のような

どっしりとした重さと

鈍くて鋭い光を持った人

という印象があった

奥に溜めこんで

一瞬をめがけて閃く

そんな静かな圧を

持つ人

表面には

まだ完全には

出てきていなかったけれど

わたしの直感は

外れていなかった

こんなにも

静かな自信と

力強いエネルギーを

持っていた

わたしの心は

とっくに奪われていたけれど

やっぱり

自分本来の輝きを

取り戻した人を前にすると

惚れ直さずには

いられない

本当に

眩しかった

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