「Liminal」

目の前の空気が

揺らがない

明らかに

これまでとは違う

それは

確か

わたしの

小さな動きひとつで

空間が

できてしまう

そんな空気を

あの瞬間

感じ取った

だから

わたしは

“向かなかった”

意識したわけ

じゃないけど

身体が

自然と動いた

それは

拒絶じゃなくて

“今じゃない”

ただ

それだけ

空気が動く

その予兆

その手前

きっと

それは

最後の境界

まだ

起動はしない

でも

ズレてはいない

そこには

高揚も

緊張も

期待も

ない

全く

何ひとつ

だから

空気が揺らがない

とても静かで

澄んでいる

どちらも

動いていないのに

距離が

縮まっている

触れたら

壊れそうだけど

壊れない

音がないのに

満ちている

何も

起きていないのに

始まっている

そんな

矛盾した

空気

ただ

“この空気は

嘘じゃない”

それだけは

分かっている

整ったわたしが

整い始めた誰かと

同じ場所に立つと

空気が変わる

だから

とても綺麗

人と人との間に

一瞬だけ生まれる

まだ何にも

なっていないのに

すべてが整っている

そんな

出来上がった空間

濁りがない

何も混ざっていない

透明さ

“恋愛”は

わたしの中では

美しいものに

分類されにくい

どうしても

欲求が

正直に

出てしまうから

それが

汚いとか

醜いとか

言っているのではなく

自分の

美の基準で

測るなら

その

“過程”は

美しいけれど

その

“欲求”に

焦点を当てると

やはり

恋愛は

濁って見えてしまう

それは

きっと

相手を見ているようで

実は

自分の不足を

見てしまうことが

あるから

不足の視点があると

やはり

濁ってしまう

恋愛ではなく

その地点の奥

もっと深い

人の本質

それが

“在り方”

まわりを

覆っていたものが

ひとつずつ

剥がれ落ちて

残った

純化されたもの

これが整った者同士が

並ぶ直前

向き合うでも

重なるでもなく

“並ぶ”

同じ方向を見て

同じ場所に立つ

それ以上でも

以下でもない

そんな

「在り方」の世界

純白の中に

光の粒子が

散っているような

揺れていないけど

止まってもいない

流れているけど

濁っていない

凛としているけど

ふわりとした

手触り

一切の

混じり気がなく

純度が高い

透明な状態

澄んだ

綺麗な空気

それが

あの瞬間

あの空間に

流れていた

二人でしか

立ち上がらない

在り方の空間

それは

これまで見てきた中で

最も綺麗で

美しい光景

まさに

liminalな世界だった

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