「扉の前で」

最初は

自分を守るためだった

もう簡単には

わたしの世界を共有しない

そう決めた

大切な出来事ほど

相手から踏み込んで来ない限り

わたしからは話さない

それが

自分を軽く扱わせないための境界線だと

思っていた

でも

時間が経過すると

少し違う景色が見えてきた

わたしは

扉を閉めたつもりでいた

けれど

本当は閉めたわけじゃなかった

「わたしは離れていないよ」

その意思だけは

ちゃんと残していた

わたしの核になる部分は

出さなかった

その日に感じたことも

自分に起きた変化も

それは

隠していたというより

簡単には渡さなくなった

そしてその境界線は

わたしを守るためだけのものではなかった

もしかしたら

それは相手にとっての扉でも

あったのかもしれない

外から見ているだけなら

そこにいることはできる

でも

その先へ進むには

自分の意思で

扉をノックするしかない

そんな場所を

わたしは初めて作ったのだと気づいた

境界線は

人を遠ざけるためのものではなかった

境界線を引くから

そこに扉が現れる

扉がなければ

入ることも

迎え入れることもできない

扉があるということは

わたしも

そこにいるということ

線を引いても

ちゃんとそこにいる

だから

境界線は

拒絶ではなく

本当の意味で

出会うための入り口なのかもしれない

ようやくたどり着いた

覚悟も

準備も

もうできている

扉のこちらと向こう側で

正面から向き合って

立っている

その扉が開くとき

物語が始まる

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