「空白の転換点」

相手と再会をしたあの日から

少しずつ

でも確実に

現実が動き始めた

「変わった」というより

内側で決まっていたものが

外に現れただけかもしれない

何か月も前から

内側では決まっていた

まだ

現実が追いついていなかった

空白の時間があった

自然にできたわけではなく

わたしが作り出した時間

再会したわたしたちは

会えなくなった

けれど

「言葉」で

やりとりをしていた

会えないけれど

近くに感じられる今

現実が

ひとつ動いた

目を合わせて

話すことができた

声をかけてきてくれた

数か月ぶりに

こうして

言葉を交わしている

でも

構図が変わっていない

わたしたちのあいだに

線が見えている

再会はあったけれど

中身は同じだった

あの日会えたことは

とても嬉しかった

同時に

心が反応していない自分もいた

まだ

同じ位置にはいなかった

それ以上は

わたしが苦しくなる

それが見えたから

空白を作ることにした

わたしには

ひとつの山場が待っていた

夫が帰ってくる

こちらも同じく

数か月ぶりだ

相手に対して

夫に対して

あの空白の中で

わたしは自分の在り方を考えていた

今回の二日間が転換点になる

そんな気がしていた

過去の自分と

未来の自分

二人の自分がいる

もう数年

夫にまともに会っていない

わざとそうしたわけじゃない

見事なすれ違いで

会わずに来れてしまった

たった数時間でも

会うのが怖くて

何か理由を探したり

用事を入れたり

なるべく

顔を合わせなくていい

状況をつくっていた

今回は

どうするのか

はじめは

予定を入れようとする自分がいた

新しいことを始めている姿を

見られたくない気持ちもあった

わたしが場所を移って

外で過ごそうかと考えていた

でも

いまのわたしには

やることがあった

リズムを崩したくない

正直、時間が惜しい

意気込んだわけじゃないけれど

動かない姿勢をとっている自分がいた

玄関の扉が開く音が

聞こえた瞬間

わたしよりも

隣にいた息子に

緊張が走った

玄関と私の顔を交互に見る

その姿を見たわたしは

自分がこれから

何に立ち向かうのかを悟った

久しぶりの対面

わたしは

自分の場所から動かなかった

挨拶もしない

目も合わせない

それまで通り

自分のことを続けていた

過去のわたしは

自分のこの態度に

後ろめたさを感じていた

それは

人としてどうなのか

子どもじみた行いなのではないかと

顔を見ると

苛立ちや嫌な感情が湧き出て

不安定な自分になってしまう

もちろん

言葉も出てこない

泣き崩れるのが目に見えていた

だからいつも

その場を去っていた

それが

まるで自分の非を認めているようで

苦しかった

けれど

いまのわたしは

違った

まったく心が

揺れていない

自分の行動に

罪悪感も

恐怖心もない

堂々と

夫の目の前で

存在することができていた

表面は

過去と同じ態度だけれど

内側が別物になっていた

自分からはいかない

感情も見せない

必要以上に関わらない

でも閉じているわけじゃない

これまでと同じ線ではあるけれど

そこにわたしの「意思」が乗った

息子に言われた

「どうして、急に笑わないの?」

「なんだか、怖いよ?」

「一緒に話をしたら?」

子どもにこんな言葉を言わせて

過去のわたしなら

胸が痛んで

きっと自分を責めていた

でも

息子のその言葉にも

反応しなかった

力を入れて抵抗もしていない

ただ静かに

その言葉を聞いていた

そして

その瞬間がやってきた

長い時間

同じ空間にいると

わたしは苦しくなってしまう

だからいつも

数日は実家へ行ってもらうように

事前にお願いしていた

ただ夫は

わたしからのお願いは

すぐに了承するけれど

忘れることが多かった

そのたびにわたしは

心理的負荷がかかっていた

色々な感情が渦巻く

お願いを忘れられていたこと

謝罪もなく適当に流されること

面と向かって

冷静に言葉を出せないわたしは

飲み込むしかなかった

今回は

先に聞いている自分がいた

はじめて自分から声をかける

案の定

夫は忘れていた

「あぁ、どうしようかな」

いつものように

そう言う夫に向かって

「事前にお願いしてたよね?

 だから実家でお願いします」

正面から目を見据えて

言葉を出した

子供たちもいるその場で

何ひとつ隠さずに

空気が変わる

わたしには

緊張も

怖さもない

揺れていない

反対に

夫の表情と

目の奥に揺れを見た

わたしは

自分の位置に完全に戻った

挨拶をしないのも

視線を合わせないのも

「いまは必要ない」

そう思っていたからだった

自分の意思を伝える必要があるとき

そのときわたしは

目を逸らさず向き合っていた

今回わたしは

自分がいる位置を

夫に明確に示した

自分の位置から動かないわたしに対して

夫は寄っては来なかった

これまでと同じ平行線

おそらく夫も

今回は

何かを悟った

「もう以前のようには

 戻れない」

この先どうなるかは

まだ

わからない

でも

わたしの意思は変わらない

もう戻らない

だから

たとえ夫が動かない選択をしたとしても

これまでと同じ平行線ではなくなる

わたしは

過去の自分を更新した

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