「青の空間―記憶―」

4年前の秋

あの場所で

初めて相手の姿を見た

一瞬の

出来事だった

かなり距離があった

顔なんて

はっきり分からない

相手の周りには

ほかにも人がいたのに

わたしの目には

相手の横顔だけが

飛び込んできた

わたしも

一人でいたわけじゃないから

何が起こったのか

分からなかった

なぜか分からないけれど

あの一瞬だけ見た横顔が

頭から離れない

表面には出さないけれど

内心はかなり混乱していた

「いまわたしは

 あの人にときめいたの?」

「あんな一瞬だけで?」

「この感覚は、何?」

ぐるぐると

言葉が頭の中を

駆け巡る

ときめきとは

少し違う

そんな

表面的なものじゃない

もっと深い

そんな気がした

ずっと探していたものに

触れた感覚

そのときは

分からなかったけれど

あれは

「やっと見つけた」

この感覚だった

ここから

一年の時を経て

わたしたちは再会する

最初に姿を見た

あの時から

わたしは

相手に会うことはなかった

だから

わたしの記憶から

その存在は薄れていた

そのときに

2度目の衝撃がきた

あれが

わたしたちの

初めての出会いの瞬間

目が合った瞬間

相手の視線が

わたしの奥深くの何かを

突き刺した

耳元で

「バン!」

と衝撃音がした

よく電気が走るとか

雷に打たれたとか

言うけれど

どれも

当てはまってしまう

下目遣いの相手と

見上げるわたし

一瞬

時間が止まった

わたしの呼吸も

止まっていた

瞬きが

できない

止まっているわたしの目の前を

相手が通り過ぎる

今度は

痛いくらいの

動悸

呼吸が浅い

周りの音が

耳に入ってこない

「何が起きた?」

このときのわたしは

相手と会ったのが

初めてではないことを

すっかり忘れていた

記憶が

すぐには繋がらなくて

混乱していた

緊張しているのか

手足の感覚がない

歩く足も

地面を踏んでいる感じがしなくて

何だか浮ついている

「何?これ」

一体自分に

何が起こったのか

初めての体験すぎて

理解が追いつかなかった

一目ぼれとか

恋のときめきとか

そんな

可愛いものじゃない

それだけは

直感で分かっていた

もっと

強くて

深い

だから

わたしの中には

「怖さ」も

あのとき同時に

生まれていた

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