「冷静と情熱」

人生のなかで

ここまで徹底的に

自分の内面を

削ぎ落とす機会があるだろうか

それくらい

隅々まで

塵ひとつ残さない勢いで

洗い出している

これまで

生きてきた中で

背負ってきたもの

身に着けてきた鎧

そういった

自分を守るために

固めていたもの

いまは

もう

必要なくなったもの

余分なものを

ひとつずつ

片づけていく

「もうこれで完璧!」

と思っても

まだまだ

残りかすが

ポロポロ出てくる

根深くないけど

少し

小さな引っかかり

わたしの内面も

綺麗に掃除されて

もう

何も残っていないと

思っていたけど

やっぱり

まだだったみたい

ほんの小さな

最初の頃から

持っていた

わずかな

疑いの気持ち

相手は

「そこは越えられないんじゃないか」

この気持ち

はじめのときは

「絶対」

無理だと思っていた

中間に来ると

「もしかしたら」

その手前までは

行けるのかも

最近は

「本当に」

そこにも踏み込める

少しずつ

形は変わっても

一度も自分の中で

「できる」と

確信したことはなかった

それくらい

強固な壁に見えていた

人は

自分が

いま

どこを重心にして立っているのかが

その立ち姿に表れる

わたしから見た相手は

まっすぐ

一人で立っている人ではなかった

いつも

上半身が

どこかに寄っていた

それは

きっと

自分の中心を

預けようとしていたから

相手がどちらに向いて

立っているのか

わたしには

見えていた

だからこそ

そこから離れるのが

簡単でないことも

もしかしたら

無理だという気持ちが

ずっと

消えなかった

それは

常に大きな問いとして

出ていたわけじゃない

でも

わたしの深い部分に

根付いていた

見ないふりを

しているわけじゃなくて

「できない」前提で

扱っていたのかもしれない

自分の中から

余分なものが削ぎ落とされて

小さな残りかすを

掃除していると

その

疑念のかけらが出てきた

それは

取り除けないほど

頑固なものじゃなく

息を吹きかけたら

どこかへ

散ってしまいそうなもの

わたしの疑念は

いま

それくらい

軽いものになっていた

相手は

もう

自分以外の何かに

自分を預けていない

自分の中心に

自分を預けて立っている

わたしの中で

あんなに強固に

見えていた壁が

いまは

ひと吹きで飛ばせるくらいの

存在になった

自分自身の

断捨離をしていくと

そこには

「必要なもの」しか

残らなくなる

自分にとって

本当に大切なもの

自分の

本心

視界も

心も

クリアになると

迷いがなくなる

そのとき

外側では

「冷たく」なったように

見えるのかもしれない

でも

それは

拒絶じゃない

気持ちに迷いがなくなると

動きにも

迷いがなくなる

最小限の

エネルギーで

動くようになる

自分の中で

優先順位が

明確になるから

どこに

比重を置くかが

決まっている

だから

外側は

静かで

安定感がある

そして

内側では

消えることなく

熱が燃え続けている

まるで

職人のように

冷たいようで

一番あたたかい

静かな熱を持つ人

そして

きっと

これが

今の

わたしたち

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