「扉の前で」

一枚の扉の前で

立ち止まっていた

わたしたち

まったく

同じ大きさの勇気を

踏み出せなかった

扉を閉じてしまった

わたしは

相手の可能性に

委ねて

「ほんの少し」だけ

扉を開けた

相手は扉の前で

その

「ほんの少し」の隙間に

自分から

足を踏み出すことが

できなかった

お互いに

同じものを恐れていた

それは

相手から

「拒絶」されることだった

これが

すれ違いを生んだ

ふたつめの誤差

相手が

ずっと

それを恐れていることを

分かっていた

だから

わたしが整えば

土台はできると

そう思っていた

そのために

わたしも

自分と向き合ってきた

自分自身も整い

相手と共に在る未来を

自分に許可した

もう

わたしの準備は

できている

あとは

扉を開けて

立っていればいい

けれど

あのとき

わたしの中に

違和感が生まれていた

それは

最近芽生えていた

違和感の芽

「どうしてわたしは

 視線を向けられないんだろう」

あのとき

わたしが視線を向けていれば

交差したはず

でも

できなかった

身体が

動かなかった

なぜ?

あのときは

気持ちが乱れていて

考えられなかった

でも

時間が経って

冷静になると

その疑問は

わたしの目の前に

はっきりと現れていた

あのとき

だけじゃない

いつからか

わたしは

視線を

「向けられなくなって」

いた

わたしたちにとって

視線が合うことは

簡単なことじゃない

過剰反応を

起こしてしまう

そのたびに

内面を激しく

揺さぶられる

きっとそれは

わたしより

相手の方が大きい

それが

分かっていたから

相手が

自分の内側に

潜り始めてからは

わたしは

意図して

見ないようにしていた

自分と向き合うとき

外側の刺激が

邪魔になることも

分かっていた

それに

わたしが視線を向けると

空気を動かして

「場」を

作ってしまうことも

それくらい

わたしたちは

視線を慎重に扱っている

わたしが動くと

曖昧な空気が

生まれてしまう

それでは

相手のためにならない

だから

相手からの

きっかけがあるまで

わたしからは

動かないと決めていた

自分から差し出さないと

誓った

自分との約束を

忠実に守っていた

それに

相手の

大事な一歩を

わたしが奪いたくない

でも

あのときは

本当にそれで

よかったのだろうか

そんな疑問が

よぎる

なぜ

そう思うのか

前は

そうする理由も

分かっていた

でも

いまは?

ズレを感じる

二人の位置が

変わっていた

相手も

以前と同じじゃない

でも

わたしは

以前の古いルールを

いまの相手に

まだ当てはめている

わたしの中の認識は

更新されていなかった

だから

違和感が生まれた

わたしは

一緒に歩きたいと言った

共に在りたいと

いまのわたしたちは

同じ位置にいる

それなのに

相手だけに求めて

わたしは

何もしないのは

おかしいじゃないか

古いルールに縛られて

見えていなかった

わたしが

視線を向ける

相手が

踏み出す

それだけでいい

そこから

一緒につくる

大げさな

何かはいらない

ただ

話がしたい

対話をしながら

ゆっくり

丁寧に

ふたりで

つくっていく

それが

わたしが

望んでいる形

ようやく

分かった

そしてこれが

わたしが

視線を向けられなかった理由

そう

思い込んでいた

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