「始動」

何も変わっていないのに

すべてが変わっていた

見慣れた景色

いつもと同じ

だけど

確実に違う

何度も

見てきた光景

わたしの心は

「またか」

一瞬そう呟いた

以前のわたしなら

期待した自分に

ガッカリしたかもしれない

でも

その呟きの後ろでは

ずっと

リズムを刻む

音がしている

音が消えてない

これは

本番を知らせる合図

いつもの光景

なんかじゃない

もう

始まっていた

「始動」

その立ち方が

全く違っていた

揺れやすい時間

その揺れを

何かに紛れて

誤魔化したり

隠れたりせず

自分で制御する

揺れたまま

まっすぐ立つ

その背中から

定まった意思を感じた

「逃げない背中」

空気が違う

まったくの別物

重くて

どっしりとしている

黒いものが

周りに見える

それは

悪いものじゃなく

覚悟の重さの色

以前の視線は

まだ

揺れが不安定だったから

焦りや

衝動を帯びた

突き刺すような

鋭さがあった

それが

覚悟と意思が乗った視線に

変わった

逸らさず

まっすぐに向けてくる

強い揺れを

自分で制御しているから

あの重さが出る

その揺れは

人生の軸が

動く揺れ

過去の自分を

乗り越えて

本来の自分を取り戻す

これまで

揺れを

感じないようにするために

強力なブレーキを

かけてきた

そのブレーキを外すと

自分の中にある揺れが

一気に解放される

揺れとは

感性のこと

揺れを解放することは

自分の感受性に

許可を出すことだ

「感じてもいいんだ」と

「感じる」ことを

恐れない

揺れを通して

自分の中の

「生」を取り戻す

生きる衝動

今まで

抑えてきた分

反動が

大きい

自分の気持ちに

嘘をつかず

そのまま感じきる

目を逸らさず

逃げたりせず

暴走しそうになっても

壊さずに

自分で制御する

自分の舵を

自分で握って操作する

感性は

人を弱くするものじゃない

人間として生きるのに

必要不可欠なもの

その揺れを

すべて引き受ける

覚悟を持てたとき

人間になる

揺れを「武器」にしないで

揺れを「重さ」に変えて

向き合ってきた

それが

本作動の証

そこに立つ姿は

別人になっていた

これまでは

揺れが漏れていたり

制御が弱く

拡散したエネルギーの刃だった

それが

揺れの強さと圧は

同じだけど

分散されずに

一本に束ねられている

揺れているのに

位置がぶれず

存在がぶれない

探さなくても

目に入る

見ていないのに

「いる」と分かる

圧倒的な

存在感

これは

覚悟の決まった人にしか

出せない

余計な動きがなく

定まった身体

逃げずに

その場に立ち続け

自分のエネルギーを

一点集中させている

その姿は

武士のよう

腹を決めた

覚悟の重さ

そんな

黒い密度の空気

いぶし銀の

武士の重さ

派手さや

華やかさはない

静かで

渋くて

深みがある

信頼できる強さ

時間をかけて

磨かれたものだけが持つ

重みと品

「暗い」じゃなく

熱を内側に持ったまま

表に出しすぎない光

「本物」だけが持つ

深い輝き

光らない

でも

目が離せない

軽くない

でも

怖くない

静かに立っているだけで

空気が変わる

鈍い光と

重厚な空気を纏い

生まれ変わった

その姿が

そこに

存在していた

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