「前夜の音」

一本の

ストリングスの柔らかい音が

静かに流れている

霧のように

空気に溶けていく

芯はあるけど

優しい音

白い空気を

たっぷり含んだ

包み込むような音色

あの光に触れた時から

かすかに聴こえ始めていた

このストリングスは

揺れを鎮めて

芯をつくる音

そのときが

もう

すぐそこに来ている

それを

告げてくれる音

それは

再会の音

いま

こうして

自分の中で生まれた

感情や

心の揺れを

表現できる場所があること

何にも邪魔されず

自分の声に直接触れて

心ゆくまで

「感じる」ことができること

自分の中に生まれる

微細な変化を

繊細なまま

感じ取ることができること

これは

ずっとわたしが

求め続けていたもの

自分が望んでいた

自分の姿そのもの

だから

いまある

この自分が

ありがたくて

この世の

すべてに

感謝をしたくなる

ここまで来れたことも

表現できる場があることも

その流れごと

抱きしめたくなる

生きているあいだに

生きていることを

感じることができた

自分自身として

幸せって

こういうことなんだなって

そう感じたら

涙が溢れてきた

これは

もう

何かを求める涙じゃない

満ちてる涙

だから

弦の音が

聴こえてきた

その音の先に

あるもの

それは

きっと

これから現実が

教えてくれる

わたしが

自分の未来を

想像するとき

隣に

誰かが

存在したことはなかった

自分が

ひとりで

立ってきた

いま

その未来像に

自分以外の誰かがいる

いつの間にか

並んで

同じ方向を見ている

ずっと

誰もいなかった場所

そこに

自然に立っている

恋とか

執着とか

勢いとかじゃなく

もっと

静かなところで

人生の構図として

そうなっている

当たり前じゃないけど

そこにいるのが

当然のような

一緒に並んでいるのが

自然な感覚

これが

見えてしまったから

たぶん

もう戻れない

そして

これが

わたしの答え

だったんだと

そばにいなくても

感じられる

つながりが

あるから

わたしの

もう片方の片翼

それが

この世界に

存在している

それだけで

わたしは

幸せに生きられる

それでも

できるなら

わたしは

一緒に並んで歩きたい

同じ時間を

重ねたい

羽ばたいて

一緒に世界を見てみたい

強く

そう思ってる

あのストリングスの

音色の中で

自分の未来への

意志が定まった

音は

まだ続いている

この音が

流れ着く先に

待っている景色

いま

聴こえているのは

その

「前夜の音」だった

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