「In My Life」

「この世はすべて

必然で成り立っている

“今”起きていることは

すべて

未来の自分につながっている」

高校生のとき

友人に

そう話したことがあった

いつ頃からかは

忘れてしまったけれど

ずっと

そう思って

生きていた

すべてに

意味を見出すわけ

じゃないけれど

その意識があると

“嫌だな”と

感じることが

あまりなかった

今思うと

未来の自分に

繋がることは

自分の

表現の素材が

増えるということ

自分の幅が

広がるような

気がしていたの

かもしれない

過去の自分の

伏線回収じゃ

ないけれど

バラバラに

散らばっていた

パズルのピースが

一つの絵になるような

絡まり合って

解けなかった

いくつもの糸が

きれいな

一本の道に

なっていくような

そんな

不思議な感覚に陥る

体験をした

運命とか

奇跡とか

そういったものを

すべて

否定しているわけじゃない

でも

夢を追いかける

人間としては

あまり好きな

言葉ではなかった

せっかく

努力を積み重ねて

得たものに対して

その言葉は

その努力を

否定されているように

聞こえるから

自分の道は

自分で切りひらく

そうやって

生きてきたつもりだった

そんなわたしでも

その考えを

根底から

ぐらつかせるくらい

衝撃が大きかった

そんな出会いだった

過去のどの部分を

切り取っても

どう組み立て

直してみても

ぜんぶ

そこに向かって

進んできたようにしか

見えないほど

きれいな

一本道になっていた

その体験を経て

わたしは

自分を

取り戻すことができた

本当の

自分に出会えた

大切なものが

手元に戻ってきた

かけがえのない

守りたいものも

わたしの中には

過去の自分たちが座る

椅子が置いてある

もう二度と

迷子にならないように

その席から

少し離れたところに

ひとつだけ

種類の違う椅子が

置かれている

まだ

誰も座っていない

その

背もたれの部分には

“In My Life”

と刻まれている

この言葉には

ずっと

伝えられなかった

わたしの想いの

すべてが

込められている

この椅子の

持ち主だけが知る

言葉の意味

わたしの

大切な

大切な想い出

あの

一瞬

一瞬が

今でも美しく輝いている

この椅子に

座ることができるのは

この世で

たった一人だけ

この先

新しい椅子が

増えることもない

この椅子は

唯一無二

代わりは

存在しない

大切な想い出を

過去にしてしまうのは

寂しいけれど

また

新しく作っていけばいい

そう思うから

思わず

運命とか

奇跡とかの言葉を

使って

しまいそうになるほど

頭での理解が

追いつかない

そんな

出会いだった

でも

ふわふわした

空想の世界じゃない

ちゃんと

地に足をつけた

現実で起きた

本当の話

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