わたしの中に
ひとつのビジョンが生まれた
たくさんの星が輝く
深い夜
静かな光を放つ
はだかの木の下に
たくさんの石がある
赤や青
緑や黄色
宝石のように
光り輝く石
ふんわりとした
世界ではなく
輪郭のはっきりとした
色鮮やかな世界
「原石の木」
わたしの中に
姿を現した瞬間だった
自分を取り戻す旅が
あの時から
本格的に始まった
すでに
人生のどん底は抜けていた
地の底まで落ち切って
自分の姿を見た
そして
いまの自分を変える
もう一度
自分の光を探すと決めた
光は
優しい場所には
いなかった
わたしにとって
いちばん触れたくない
踏み出すのを
躊躇ってしまう
「本当にそこにあるの?」
思わず
何度も確認したくなるような
そんな場所にあった
そこを踏み越えて
それと向き合わないと
光に触れることができない
きっとこの先に
自分が求めているものがある
それは
長年切実に
求めてきたもの
わたしが生きるために
絶対に必要なもの
この扉を開けて
足を踏み入れたら
始まってしまう
もう
戻れない
確実に
痛みが伴う
でも
わたしはもう
あんな暗闇で生きるのは
ごめんだ
地の底で
身動きが取れないまま
下ばかり向いて
生きたくない
下から上を見上げて
何かに憧れて生きるのも
嫌だ
せっかく
あそこから
這い上がって
ようやく
呼吸ができるようになったのに
自分を責めることが
誠実さだと
思い込んでいた
でも誰も
引き止めたりしていない
動くのも
動かないのも
ぜんぶ自分次第だ
自分を後回しにして
自己嫌悪を繰り返している
場合じゃない
変化は
少し怖い
でも
変化がない自分のほうが
もっと怖い
こんなところで
化石のようになりたくない
わたしは
何となく
それなりにやり過ごすような
そんな人生は
望んでいない
自分が望むものに
自分の情熱の
すべてを尽くす
そういう
生き方がしたい
自分の光を
取り戻すために
わたしは
敗者復活戦の舞台に立った
そこに立つと
原石の木が
姿を現した
同時に
過去の痛い記憶も
次々に出てきた
次第に
記憶の中だけではなく
現実の中でも
過去の自分と
対峙することになった
怖い
嫌だ
傷つきたくない
苦しくて
何度も泣いた
でも
自分の手で
自分の生き方を変える
その決意は
絶対に曲げない
自分の人生で
自分自身と
勝負をしたことのない自分には
なりたくない
わたしの人生を懸けた
本気の挑戦
誰にも
邪魔させない
自分との戦いに
何度も挫けそうになりながら
ひたすら
言葉を綴ってきた
自分を取り戻す中で
色々な景色を見た
原石の木だけではなく
たくさんの素材が
わたしの中に生まれた
大学生の時に出会った
トルストイの小説
「戦争と平和」を
書き上げるために
図書館ひとつ分の
本を読んで勉強した
作者のエピソードを知ったとき
その圧倒されるような情熱に
驚愕した
同時に
自分の中で
湧き上がってくるものがあった
そのころから
大きな世界を
精密につくることが
夢になった
壮大なテーマは
迫力があるけれど
中身が伴っていないと
稚拙になる
世界観と物語
物語と音楽
どちらも
同じくらいの
密度と厚みを持っていないと
物足りない世界に
なってしまう
緻密に構築された
壮大な世界
それに
わたしも
挑戦してみたい
マニュアルのない
誰も踏み入れたことのない
未開の地だったとしても
深く根を張り
枝を広げ
生きた土壌をつくる
自分の命を懸けて
広大な地に
自分だけの世界を創る
そして
そこから見える景色を
見てみたい
その気持ちが
燃え続けていた
ピアノ
色彩
歴史
人の心
これまでの人生で
興味を惹かれ続けてきたものたち
あれは
わたしの原石だった
わたしの原石の木の下にあった
色とりどりの原石は
過去の自分自身と
これから生まれる創作の
素材たちだった
わたしが
これから描く物語
自分で開拓し
耕してきた土壌から
いま
芽を出し始める
わたしだけの
原石の花を
咲かせるために
ただ美しいだけでは
足りない
幻想的な世界に
人間の普遍的な
本質を置く
喜びも
悲しみも
愛も
葛藤も
その上に
世界は築かれていく
愛や夢
きらめく揺らぎ
その美しい世界の
奥にあるのは
覚悟
決意
戦い
人間の
生々しい生き様
原石も鏡も
光も音も
言葉も絵も
ひとつずつ
作ってきた
でも
すべて同じ世界へ
続いていき
ひとつの世界になるための
土台となっていた
冒険の地図は
すでに描かれていた
わたしが
これから歩いていく
まだ
名もない世界の地図
自分の人生への
再挑戦の末
手にしたもの
それは
自分自身の地図だった

