「―美のあいだ―」

橋の向こうで待っていたのは

新しい世界だった

澄み渡る

高い空

透明な

川のせせらぎ

どこを見渡しても

綺麗な青と緑

その景色に

目が癒されていく

橋の下を流れる

澄んだ川の水を眺めていると

時間を

忘れてしまいそうになった

光が

石や水面に反射して

淡くきらめいている

でもその奥にある

遠い場所には

黒と濃いエメラルドグリーンの

神秘的な世界

同じ流れの中に

違う顔を持つ

その色彩の美しさに

見惚れていた

人の手が加えられていない

そのままの姿

それは

手に入れたくても

すぐには手に入らないもの

だからこそ

その場所に行くと

全身で

深く呼吸をする

その空気を

身体いっぱいに

取り込むように

山や竹林に囲まれると

音が散らばらず

ひとつの場所に

集まってくる

音はあるけど

無音

それは

こういうことなのかもしれない

静けさに

耳を澄ませて

風の音

虫の声を聴く

壮大な自然の中にいると

視線が上がる

前に出たい気持ちが湧いてきて

解放的になってくる

器の大きなものを前にすると

自分の存在が

小さく見える

そして

「もう、いっか」

諦めて

手放す気持ちになる

それは

卑屈になって

投げやりになるのではなく

この大きな存在に
自分は絶対に敵わない

そう認めたとき
抵抗するのをやめた

それは
降伏の証

橋を渡る前は

まだ怖くて

小さくなっていた

どこまで

どんな風に

自分を出したらいいのかが

分からなくて

でも

こんなに美しい景色を前にして

小さくなっているのは

もったいない

わたしは

もっと関わりたい

もっと触れて

もっと深く感じたい

自然は

逃げたりしない

わたしを

そっと受け止めてくれる

だから

誰かの後ろに隠れたり

手を差し伸べられるのを

待ったりしなくても

大丈夫

わたしは

前に出ていける

自分の欲しいものは

自分で取りに行く

橋を渡りきった後のわたしは

その一歩を

踏み出していた

降りそそぐ

柔らかい太陽の光

その下で

たくましく生きる生命

雨が降ると

草木が根を張り

太陽の光は

実りを育む

風が吹けば

種を運び

また

新たな生命が生まれる

その美しい循環の恩恵を

私たちは享受している

人は

何のために生きるのか

「幸せになるために」

では

幸せとはなんだろうか

欲を手放し
我を手放し

その先に
何が残るのだろう

何も持たなくなることが

生きることなのだろうか

手放したその先で

わたしは
自分を見つけて

そして
その自分を生きたい

人も動物も

同じ空の下

同じ太陽の光を浴びて

生きている

生きるために

食べて

空腹を満たし

水を飲んで

のどの渇きを潤し

そして

眠りについて

身体を休める

そこには

何の違いもない

大地を強く蹴り

高く跳ぶ

自由に駆け回り

力強く声を出す

暑ければ

日陰を探し

寒ければ

日向を探す

目の前に獲物がいれば

それを口にし

眠たければ

そのまま眠る

日々を

力の限り

生きている

けれど

欲のままに

暴れているわけではない

動物にも

それぞれの個性がある

警戒心の強い子もいれば

人懐こい子もいる

動物にも

恐れがある

だから警戒する

自分を守るために

威嚇し

攻撃する

そうやって

自分の声を聴き

正直に生きている

生き物はみんな

あるがままの姿で生きている

欲があるのは

悪ではない

それもまた

自分の声

けれど

欲のままでは

ときに自分の中で

暴れてしまう

大切なのは

その声を無視せずに

耳を傾けること

自分の欲を知り

その自分を

引き受けること

そうして初めて

欲の奥にある

自分の本心が見えてくる

そこにいるのが

ありのままの自分

その自分を見つけて

その自分で生きるために

わたしたちは

生きている

苦しみがないことが

幸せではない

喜びも苦しみも

自分も世界も

両方ある

わたしたちは
どちらかになるためではなく

そのあいだに立ち
自分として生きる場所を
探している

草の匂いを感じ

光を浴びる

自然が織り成す

景色を見て

美しさに

心が動く

その自分を感じて

「あぁ、わたしは生きている」

心と身体で

そう感じることができる

自分が何を感じ

何を欲しているのか

何が嫌で

何を美しいと感じるのか

感情に支配されない自分は

自分を消すことではない

余分なものを

削ぎ落とした

喜びも

苦しみも

欲も

恐れも

そのすべてを知り

引き受けた先にいる

その奥にいる自分に

辿り着くこと

その自分を見つけ

その自分として

生きていく

きっと

人が生きる意味は

そこにある

一年前の今日
わたしは
わたしへ還る道を歩き始めた

そして一年後の今日

自分を見つけた自分のまま

わたしは
橋を渡った

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