「卒業 ―わたしの音―」

もう

最後に聴いたのは

いつだったか

思い出せない

あんなに

大好きだったのに

偶然

忘れていた音が

わたしの中に流れ始めた

最近まで

わたしの世界は

ひとつの音

一色だった

自分でも気づかないくらい

深く浸透していた

でも

わたしの中に

違う音が流れてきた

わたしが

ずっと好きだった音

その音を

耳にした瞬間

涙が溢れた

この声が

大好きだった

まるで

つぶやくような

物語を読んでいるような歌声

薄い布が

幾重にも

重なり合っているような音

繊細で

壊れそうなのに

その奥には

たしかな芯がある

空想を羽ばたかせたくなる

独創的な世界観

すべてが

大好きだった

あぁ

これは

わたしの音だ

まるで

自分に還ったような

深い安堵感

音に満たされている

自分がいる

創作の夢を

抱き始めた

あの頃のわたし

純粋に

創ることが楽しくて

言葉を紡ぎ

音をつくり

自分の求める世界を

探し始めた

未来が

夢と希望で輝いていた

あの音は

たしかにわたしを

ここまで連れてきてくれた

だから

消す必要はなかった

ただ

もうその場所には

いられなくなった

わたしの中に

違う音が

聴こえてきてしまった

自分自身に

戻ろうとしたわけでも

その音を

忘れようとしたわけでもない

そっと

静かに知らせるかのように

自然に

流れてきた

もう

戻ることはできない

きっと

その音を通して

自分を見つけるわたしが

もう

終わりを迎えた

だから

これまでのわたしを

ここで卒業する

わたしはいま

わたしの音に戻ってきた

もう大丈夫

わたしは

わたしに還ってきた

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