「雨音の裏側で」

リハーサルの日も

雨だった

本番の今日も雨

出番が近づくにつれて

雨は激しくなる

生まれ変わるための

洗礼を受けているみたい

一人で待っていると

居ても立ってもいられなくなる

じっとしていることができなくて

何度も深呼吸をする

手袋を付けていても

手が冷たくなっているのが分かる

最初の音を

何度も確認する

もうこれが

緊張なのかなんなのか

分からない

足が震える

逃げてしまいたい

ほかの人の演奏が

じわじわと

わたしの心を揺さぶってくる

「楽しんで演奏する」

わたしにとって

これが一番難しい

楽しむって

何だろう

楽観的になりたいけれど

できなかった

きっとこれが

わたしの今後の課題

うまく弾くことは

できなかった

想像以上に

弾けなかった

あんなにボロボロになる?

ってくらいに

本番は

やっぱり何が起こるか

分からない

たくさん練習した

だからこそ

すごく悔しい

でも

18年ぶりの舞台で

完璧な演奏ができたら

それはそれで

奇跡に近い

完璧には弾けなかった

震えて

焦って

止まって

納得のいく演奏では

なかったけれど

最後まで

弾き切った

かっこ悪い自分を

さらけ出して

それでも

逃げずに立ち切った

わたしは今日

未熟なまま挑戦する勇気を得た

もう少し

上手くなってから

もっと

自信がついてからではなく

未完成のまま

舞台に立った

覚悟は

完璧になることじゃない

自分の未熟さも引き受けて

それでも立つこと

その積み重ねが

自信になっていく

飾らない自分で立ったら

一気に

新しい風が舞い込んできた

音楽が

繋いでくれた出会い

わたしの人生が

動き出した

緊張と不安の

戦いだったけれど

あの光の中に

わたしはまた戻ってきた

そんなわたしを

見ていてくれた人たちがいる

息苦しい人生だった

でも

自分を諦めなくて

本当に良かった

今日流した涙は

本気でぶつかった証

外の雨とは反対に

踏み越えた先の景色は

からりと晴れ渡っていた

最高の気分だ

もっと

自分に挑戦できる自分になる

わたしの物語が始まった

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