「わたしの原点」

クラシック音楽を

好きになれないことに

悩んでいた

授業の曲を

勉強しないといけないのに

ロックや洋楽ばかり

聴いていた

音楽を学びたくて

来たはずなのに

夢中になれない自分が

間違っている感覚になった

自分の本心が

見えない

そんなとき

舞台の世界と再会した

高校三年間

離れていた世界

初めて出会ったときのように

一気にのめり込んだ

でも

全く同じでもなかった

あの頃に植えられた種が

小さな芽を出した

ファンの一人として

その人とその世界を

見ていた

違和感があった

何とも言えない

焦燥感のようなもの

心から応援している

この気持ちに

嘘はない

けれど

その人が光を浴びて

輝いている姿を見ると

わたしの心が激しく揺れ

痛み出す

その人の光が眩しくて

まるで

自分の影を

映し出されているようだった

ようやく分かった

わたしは

その人たちを応援する場所ではなく

同じ場所に立ちたかった

年齢に差はないのに

その人たちは

自分の光を見つけている

わたしにも

同じものがある

それなのに

まだここにいる

近くに寄ることで

その差がはっきり見えた

その人たちと自分の

立ち位置の違い

その事実を

突きつけられるのが

苦しかった

憧れなんかじゃない

わたしは

その人たちに

嫉妬をしていた

「わたしも

 表現の世界にいきたい」

これが

わたしの中に顔を出していた

芽だった

舞台の世界を

創る側になる

すぐに辿り着いた

どうしてロックの音が

あんなにも

心地よかったのか

それも全部

わたしの内側だった

当時は

クラシック音楽の世界の

自分で勝手に作り上げた

「こうあるべき」に縛られていた

白か黒かの

二択だから

ここに来たのなら

クラシックだけを学ぶべき

ひとつのことに

本気になっているのなら

他に気は向かないはず

この逆にあるわたしは

中途半端で

できていない人間

そう感じて

焦っていた

内側には

確かな熱がある

それは

間違いない

でも外に出す手段が

まだない

それを

ロックや洋楽の音が

代わりに形にしてくれていた

わたしの中の反骨精神が

外に出たがっていた

窮屈さを

感じ始めていた

枠を壊したい衝動に

駆られる

もっと

広い世界を見たい

「わたしは

 舞台の演出家を目指す」

熱が

初めて姿をあらわした

自分の好きの輪郭が

見え始めた

わたしを生きるための扉

その前にいた

あの頃の自分

あれが

わたしの原点だった

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