「鏡のアトリエ」

今日

息子が生まれて初めて

自分から友達に話しかけた

行き渋りのある息子は

自分の気持ちを

言葉にすることを怖がり

人との関わりの中で

ずっと葛藤してきた

僕は友達が欲しい

でも

友達って何だろう

小さな頭で

深く考えていた

自分は本当は求めているのに

その気持ちに触れずに

一人でいいと否定する

でも身体は正直だから

本心と違う行動に

拒否反応を示す

その矛盾に

苦しんでいた

「自分に嘘はつかないでね」

わたしは

それだけを伝えてきた

最近

唯一親しかった友達と

少し疎遠になったことを

息子は気にしていた

本当はまた話したい

でも

自分から話しかけるのは怖い

わたしは

息子に言った

「ずっとその子から

 話しかけてくれたのなら

 少し疲れてしまったのかもしれないね

 自分ばかりな気がして

 寂しくなったのかも

 今度はあなたから

 来てくれるのを

 待っているのかもしれないよ」

それを聞いても

息子はすぐには

動けなかった

怖いものは

怖い

頭でわかっても

心と体は

すぐにはついてこない

それでも今日

息子は自分から

その子に話しかけた

ある瞬間

「今かもしれない」が

頭をよぎった

どうする?

何て言う?

「よし、いくぞ」

慌ただしく揺れる心の中で

覚悟を決めたらしい

息子に

「すごいことをしたね」と伝えると

息子は

「そんなに大きなことを

 やった感じはしない」と言った

その言葉を聞いたとき

わたしは感じた

あれほど

高く見えていた山は

息子に力が足りなかったから

越えられなかったのではない

越える力は

もうずっと

息子の中にあった

ただ

怖さによって

自分にも越えられることが

見えなくなっていただけだった

踏み出してみたら

そこにいたのは

何かを新しく手に入れた

息子ではなく

もともと

乗り越えられる力を持っていた

息子だった

人は

足りないから

動けないのではないのかもしれない

自分にはできないと思い込み

自分の中にある力が

見えなくなっているだけなのかもしれない

けれど

その力は

誰かが代わりに

与えられるものではない

誰かが

その人を変えるのではなく

その人の中に

すでにあるものが

見えるようにする

答えを与えるのではなく

その人が自分で選び

自分で踏み出すまで

その人の力を信じて

隣にいる

わたしはこれから

そんな場所を

つくっていきたい

音と言葉と絵を通して

その人の中にあるものを

見えるようにする場所

足りないものを

足すためではなく

すでにある自分に

気づくための場所

Atelier soeは

在り方のアトリエです

その人の中に

すでにあるものを映し出す

鏡のような場所

今日

息子が初めて

自分から友達に話しかけた日

それは

息子が自分の力を

自分で知った日であり

わたしが

これからつくる場所の核を

目の前で

見せてもらった日だった

目次